家を建てるとき、私たちは部屋の広さや動線について何度も話し合います。リビングは何畳にするか、収納はどこに設けるか。ところが、家の中でもっとも広い面積を占めているのに、ほとんど議論されない場所があります。屋根です。
屋根は、家の中で最大の「未使用スペース」
一般的な戸建て住宅を真上から見下ろすと、建物のほぼ全体が屋根に覆われています。床面積と同じか、軒の出を含めればそれ以上の広さがそこにあるということです。
にもかかわらず、屋根に何かを置いている家はほとんどありません。物を置くわけでもなく、人が上がるわけでもない。雨や日差しから家を守るという役割を黙々と果たしながら、それ以外の用途を持たない広大な平面が、私たちの頭上に広がっています。
家の中では数十センチの収納スペースをめぐって工夫を重ねるのに、頭上の数十平方メートルはまったく手つかず。改めて考えると、これはかなり不思議なことです。
「余白」を資産として見直す
太陽光発電の面白さは、この見過ごされてきた余白に役割を与える点にあります。屋根はもともと、家の中でもっとも日当たりの良い場所です。周囲の建物に遮られにくく、一日中まんべんなく光を浴び続けている。発電装置を置く場所として、これ以上ふさわしい条件はなかなかありません。
庭にスペースを設ける必要も、新たに土地を用意する必要もない。すでに家の一部として存在している面を、そのまま使う。この「追加の場所を必要としない」という性質は、住宅における太陽光発電の大きな利点です。
屋根の広さは、そのまま可能性の大きさになる
では、屋根の広さは具体的に何を左右するのでしょうか。
載せられる量を決めるのは、面積そのもの
太陽光パネルは一枚あたりの寸法がおおむね決まっており、それを何枚並べられるかで設置できる容量が決まります。つまり、使える屋根の面積が広ければ広いほど、発電できる量の上限も上がっていきます。
ただし、屋根の面積すべてがそのまま使えるわけではありません。パネルを設置するには、屋根の端から一定の距離を空ける必要があります。強風の影響を受けやすい縁の部分を避け、施工や点検のためのスペースを確保するためです。
さらに、換気口、天窓、アンテナ、煙突といった突起物があれば、その周囲も使えません。図面上の屋根面積と、実際にパネルを並べられる有効面積の間には、必ず差が生まれます。
図面の数字と、現地の数字
もうひとつ知っておきたいのが、屋根の面積は図面上の投影面積とは一致しないという点です。真上から見た面積は、傾いた屋根の実際の面よりも小さく出ます。勾配が急であるほど、この差は大きくなります。
こうした計算は、実際に屋根を見て測ってもらうことで正確になります。地図アプリで自分の家を上から眺めてみるのは検討の入り口として楽しい作業ですが、そこで得られる数字はあくまで目安です。実際にどれだけ載るのかは、現地を見た人にしかわかりません。
一面か、複数面か
屋根の形も大きく効いてきます。片流れのように大きな一枚の面を持つ屋根なら、パネルをまとまった単位で並べやすい。切妻なら二面、寄棟なら四面と、面が分かれるほど一面あたりの広さは小さくなります。
面が細かく分かれている屋根が不利かというと、必ずしもそうではありません。複数の方角に面を持つことで、朝と夕方の両方に発電が伸びるという特性が生まれることもあります。屋根の形は、それぞれに違った可能性を持っているということです。
余白の使い方は、家によって違っていい
屋根の余白をどう使うかに、唯一の正解はありません。
使い切ることが目的ではない
載せられる限界までパネルを敷き詰めることが、必ずしも最適とは限りません。その家がどれくらい電気を使うのか、将来的に家族構成がどう変わるのか。そうした条件によって、ちょうどよい規模は変わってきます。
余白を全部埋めるという発想ではなく、暮らしに合う分だけ使うという発想。屋根に空きが残っていても、それは無駄ではなく、単に今の暮らしに必要な分がそこまでだったというだけのことです。
余白は、住宅だけのものではない
屋根という余白を持っているのは、戸建て住宅だけではありません。工場、倉庫、店舗、公共施設、集合住宅。広い平面を頭上に抱えている建物は、街のあちこちに存在します。
新しく土地を切り開くのではなく、すでにある建物の上を使う。この考え方が広がっていけば、街の風景を大きく変えずにエネルギーのつくり方だけを変えていくことができます。自分の家の屋根を見上げる視点は、そのまま街の屋根を見渡す視点にもつながっています。
屋根を見上げる習慣がつく
太陽光発電を検討し始めると、多くの人が自分の家の屋根を初めてまじまじと眺めることになります。何度も出入りしてきた家なのに、屋根の形や方角を正確に答えられる人は驚くほど少ないものです。
どちらを向いていて、どんな傾きがあって、周りに何が建っているのか。改めて見上げてみると、これまで見えていなかった家の姿が立ち上がってきます。太陽光発電を考えることは、自分の家をもう一度知り直すことでもあるのです。
頭上にある、まだ使われていない場所へ
新しい土地を買うわけでも、部屋を削るわけでもありません。もともと家の一部として、そこにあり続けてきた面。その広さに気づくことが、太陽光発電という選択の入り口になります。
家の中で最大の未使用スペースは、ずっと頭上にありました。屋根の余白に目を向けたとき、住まいの見え方は少しだけ変わります。
